ベンタイン市場
2009年3月15日


街歩きの持ち物

昨日はサイゴンを概観するために市内ツアーに参加した。
今日はツアーの中でじっくりみたいところや、ツアーで訪れなかったところを見るつもりだ。持ち物は水、「地球の歩き方」、「ベトナム町並み観光ガイド」、レストランを見つけるために「ベトナムめし楽食大図鑑」の3冊とTNKトラベルでもらった地図だ。この地図はイラスト入りで、見やすい。


ドンコイ通りをサイゴン川へ向かって歩く

宿泊している「キム・ロン」ホテルはドンコイ通りから「アオザイツアーデスク」の方に入った通りにある。
さて、「フーンセン」ホテルの角に立ち止まった。この向かいには、「ベトナムハウス」という、サイゴンでも最も古いレストランがある。歴史的な建造物がさりげなく、たたずんでいる。夜ともなれば、アオザイを着た娘さんが付近のマッサージ屋の名を記したチラシを配っている。

サイゴン川に向かって歩くと、右手にグランド・ホテルだ。
建築後は他を圧倒するような存在感があったのだろう。今も、その重厚さは失われていない。ただ、周囲の建築物が高層になって埋もれてしまう感はある。


グランド・ホテル

旧税関?


そのグランド・ホテルの右にはアメリカ在住の歌手、カン・リーのライブ・ハウスがあったはずである。十字路にたたずみ、想像力をたくましくするがぴんとこない。その辺りはビルを建設中で板囲いがしてあるからだ。カン・リーは「ベトナムの太陽」、「サイゴンの歌姫」と呼ばれ、ベトナムで最も人気のある歌手だった。サイゴンが陥落した1975年4月30日の前夜に船で東シナ海に脱出した。家族が離れ離れになった瞬間だ。

彼女は、「白い夏」の中で歌う。
太陽よ照らせ 服を風になびかせていく君の細い肩を
太陽よ照らせ ブオムの花を映す君の哀しげな瞳を
君の行く路には雲ひとつなく 陽光はあふれんばかりにふり注ぐ
太陽よ 白い花の咲き乱れる午後の雨を吹き払え
そして君の長い指を照らせ 君の行くところ 僕もまた行く
(サイゴンの歌姫 角英夫著)

ワタシはグランド・ホテルを背にして立ったままだ。そこはゴードックケー通り。その角に彼女の家はあったのか。

朝の空気をふりほどいて、歩く。その先にはクラブ・マキシムがある。その隣がカン・リーのクラブがあった場所。

今、アメリカに住んでいる彼女は、ベトナムに一時帰国することはできても、公演を行えないでいるらしい。彼女は里帰りをしても、歌うことを禁じられ、肉親や作曲家に会うことしか許されないでいる。



← カン・リーのCD(ベトナムで買った一枚。15000ドン、90円)



ハムギ通りを歩く

マジェスティック・ホテルを右に見ながら歩く。
そこをすぎると、グエンフエ通り。ここでもカン・リーはスカーフをかぶり、サイゴンの変貌を目に焼き付けた。サイゴンでも賑わいのある通りだ。

次第に暑くなってきた。
それにサイゴン河畔を走る車の騒音がひどい。旧税関を見て、日本総領事館の脇を抜けてハムギ通りに入って行く。暑い! 酷い暑さだ。どこかカフェがあれば休めるのに。

イタリア料理店がある。TNKトラベルでもらった地図を見ると、近くにおいしい「ニューラン」というパン屋さんもあるらしい。そばで焼き豚を売っている。見るのを躊躇するのは、ハエが黒く密集しているからだ。ベンタイン市場に向かって歩く。次の角は、トンタットダム通り。市場が並んでいる。


焼き豚屋

トンタットダム通り

この通りは古くからある目抜き通りなのだろう。植民地時代の建築物や独立直後の建築物らしいものがある。暑い! 日影が限られている。太陽は真上にある。歩き始めたから2時間近い。ふらふら状態でハムギ通りを歩いていった。

ハムギ通り

植民地風の建物



突然、強盗にやられた!

今、歩いているハムギ通りは交差するパスター通りをすぎてから建設中の板囲いになった。それは、次の交差点、ナムキーコイギアになっても続く。もう、ベンタイン市場の前のロータリーが見える。

突然、小柄な男が近寄って来た。
英語の本を広げ、そこにはパスタ料理の写真が印刷されている。レストランの客引きか?
「ノー、ノー」
食事はしたくない。手をふった。男はなおも顔を寄せてくる。何か言っている。
うるさいな。いらない、いらない。中年の男だ。髪がワタシより多い。その顔が下から見上げ、薄気味悪い。ベトナム戦争の映画で、ジャングルの中で突然現れるゲリラ兵を想像する。一層、本を広げて、体を押しつけてくる。周囲を見ると、工事現場。だれもいない。

やばい! 体に巻きつけたバッグを、無意識に引っ張った。途端に男は逃げていった。
ハー、と息を吐く。バッグを見ると、止め口が空いている。ヤラレタ。
夢中になって、現金、カードを改める。盗まれていない。ホッとすると、汗が噴き出してきた。早足でベンタイン市場に歩いた。まだ、息が弾んでいる。



ベンタイン市場

ZENで

南ベトナムのころ、処刑が行われたコーナーを早足で歩く。市場の正面入口を通る。今度は靴磨きがやってきた。
「磨くよ」
だって、サンダルだよ、オレ!
「磨くよ」
Tシャツの袖をひっぱる。顔は? やはりジャングルで活躍しているような、引き攣った笑み。ニューワールドホテルの前だ。まだ、ついてくる。
ホテルに逃げ込む。サンダル履きという格好だが、気にしてはいられない。
この向かい側の公園は鉄道のサイゴン駅があったところ。じっくりみたかったのだが、ホテルでトイレに行き、時間を稼ぐ。冷房が利いているのに、汗が噴き出してきた。

いろいろなことに遭遇しても、行きたいと思ったところには行きたい。それはZENでベトナムスイーツを食べたい。そんなことと思われるでしょうな。ホテルをこそこそ出て、外をうかがい、歩き始める。体をコチコチにして緊張し、ついでに構わず突っ込んでくるバイクを除ける。写真を撮る余裕はない。

やっとベトナムスイーツにありつけたときは疲労度100%だ。ちなみに、上の写真のスイーツは15000ドン、90円です。まだ、汗が止まらないんですよ。すごいですよ。汗がどくどく。強盗と靴磨き強要で、くたくたですよう。




昼食は、レストラン「フォー24」で!

フォー24はチェーン店。あちこちに洒落た店構えで店を開いている。入った時刻は昼食時を過ぎていたが、日本人や観光客で込んでいた。ちなみにフォーとご飯で69000ドン、420円。バカ高いし、ベトナムの屋台で鍛えたワタシの舌には薄味だ。


フォー

ご飯



映画「ラマン(愛人)のロケ地、レ・フォンホン高校へ

「ラマン」をロケした場所があると、「ベトナム町並み観光ガイド」(友田博通編)にあった。地図の上に丸印がつけてある。それだけでは大まか過ぎて、分りずらい。昨日、TNKトラベルに行き、ベトナム人の女性にインターネットで調べてもらっておいた。とても親切で、すぐクリックを動かす。場所は「235 Ng Van Cur P4_Q5、 Le Hong Phong」。

場所がわからないので、タクシーにする。
住所を書いた紙切れを運転手に見せた。頷いてくれ、発車したのだが……。
車はドンドン走る。タクシーに乗ると、どうして胸がドキドキするのだろう。だって、違う方向に走っているような気がする。
「ここだよ」
ドキドキしたのにワタシはチップをやってしまった。反省する。これだけベトナム人にいじめられてきたのに、到着したら、お愛想笑いをするのだから。一度、びしっと言いたい。タクシーの道順、違うだろに。言えない。言えば、仕返しがこわい。

住所を書いた紙きれを太陽に透かし、住所を確認する。
「235番地、合ってる」
しかし、でえすねえ。ないのです。高校がない。あるのはモーターバイク屋、その隣は食堂。
「ここに行きたいんです」
なるべく聡明そうな、若い、女性の前に立ちはだかり、住所を書いた紙をひらひらさせる。
うーん。それだけである。
「235って、ここですよね」
「あっちへ行ってみたら」
そうか、あっちか。元気に走りだす。太陽が頭を直射し、皮がひりひりしてきた。
ない。学校、ない。今度はサラリーマン風の男性に尋ねよう。女性はワタシの顔をみて、恥ずかしかったからだな。だから、知らないと言えなかった。
「この住所は、どこですか?」
「向こうだよ」
そこは、女性が、、違うと……。
場所を求めて走りまわっていると、余計にその場所を見たくなる。サイゴンに来たからには、ここを訪れなければ、死ねない! 暑さの中で、ぜいぜい! 顔が引きつってきた。持参したペットボトルの水はなくなってしまった。路上カフェで冷たいものを飲もうか。いや、氷がこわい。腹を下したら、トイレはどこ?



レ・フォンホン高校

「235」番地にたたずんでしばし考える。確かにここは235番地だ。だから、235番地は別のところにあるのではないか。こういうことは東南アジアではよくあることではないか。冷静に考える。じっくり当たりを見回す。目指すのはフランス風の建築物。それらしき建物がある。門もある。
「Le Hong Phong?」
ガードマンは首をひねる。通じていないのだ。中に入ってしまう。汗でびっしょりなんだから。この建物でなけりゃ、この建物を目指す高校にしてしまおう。
「サイゴン大学?」
こう書いてある。いや、この中に高校はあるのではないか? 何しろ235番地に近い。

結局、全然違うところにレ・フォンホン高校はあった。そこも235番地となっている。どういうことなのだろうか。ガードマンに断って、中に入れてもらう。女子生徒とワイワイいいながら、写真を撮ってもらって満足したのでした。

レ・フォンホン高校

レ・フォンホン高校の中庭

サイゴン大学

サイゴン大学



乗合バスで戻る

ここは下町なのだろうか。車道の脇に天秤棒をさげた人たちが市を開いていた。交通事故もあったらしく警察官が来ていた。避けるように歩き、停留所を見つけた。ここからバスに乗って、ベンタイン市場に戻った。

停留所の近くで!

バスのキップ、
3000ドン、18円

車内で、右の学生に乗り方を教えてもらった

バスの車内



REXホテル近くで!

レロイ通りを歩いて人民委員会まできた。レックスホテルの向かい側にある国営百貨店で水やコーラを買う。ここはスーパーマーケットがあり、値段の交渉をしなくて便利だ。近くのエデンモールでCDを漁る。ここでカン・リーのCDを見つけた。だが、チン・コン・ソンのCDはなかった。

レックスホテル
そこから右折してグエンフエ通りを歩く。
オスカー・サイゴンホテルがある。このあたりはカン・リーが一時帰国した時に、たたずんだ場所だ。このホテルができたのは1972年というから、戦争末期である。

そのとなりに「パレス・カフェ」がある。疲労して、体が動かない。ひと休みだ。

パレス・カフェでジュース、
40000ドン、240円

パレス・カフェの入口



「バグダン・ホテル」の1階で日本食

パレス・カフェから脇の道、マックティブオイ通りを行けば、ホテルはすぐだ。ドンコイ通りまできた。フーンセンホテルで結婚式の披露宴が始まるらしかった。花婿、花嫁が歩道に立って参加者に挨拶をしていた。
夕食はホテルの向かいにある日本食堂に行った。疲れて混濁した頭で、定食を注文し、置いてあった朝日新聞を読む。鯖の味噌煮定食、120000ドン、720円である。

今日は強盗騒ぎ、靴磨きの強要、高校探し、乗合バス乗車などいろいろなことがあり、疲労困憊して、胃が日本食を欲している。


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