土色のシエム・リアップ川に沿ってトクトクは走る。 ふんだんに風がはいるのだが、暑い。もう30分もアスファルトの上を走っている。軽のオートバイに荷台をつけた車だ。 そのうちにガソリンが切れたのか、止まってしまった。ウイスキーのビンにガソリンを入れて販売している店があった。ここでもガソリン価格は上がっているとのことである。高床式の家が見えてきた。下は湿地だ。トンレサップ湖が増水すると水位が上昇するのだろう。 検問所がある。船に乗らないつもりだったが、船に乗らないと湖近くに行けないのだと、検問は言う。しぶしぶ20ドルを払って、湖の近くまで行く。船はこっちだよ。呼び声がかかる。太陽がかーんと後頭部を照らし、薄い部分が焼けるように痛くなる。 ぼんやりとした頭で考える。わたしは20ドルも支払った。このカネは公共施設の改善のために使われている形跡はない。どこに行ってしまうのだろう。カンボジャ人の1か月の平均収入は50ドルだと言う。支払った20ドルはいかにも大金である。 |
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船の運転と、案内は少年であった。18歳、16歳だと言う。ペラペラよくしゃべるのだ。それもうまい英語で。 「学費は月25ドルかかるんです。午前中学校に行き、午後、この仕事をしています。将来は、シエム・リアップにでて、ガイドになりたい」 耳元で叫ぶ。 「英語と日本語を勉強しています。今、あなたが20ドルくれれば水上学校の生徒たち、60人にノートなどをプレゼントできる。20ドルもらえない?」 黙っていると、何度も言い続ける。 「ノー」 俺だって毅然としているのだ。ノーと言える日本男児だ。 すると、湖を岸からかなり離れたところで、エンジンを停めてしまったのである。 「20ドル、もらえると助かるんだ」 だんだん怖くなってきた。 「もう、船を戻せ」 にゃっと微笑むだけ。船は動かない。 |
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