シエム・リアップ  

    トンレサップ湖、寄付強要ボート
      

2008年7月19日〜21日  



土色のシエム・リアップ川に沿ってトクトクは走る。
ふんだんに風がはいるのだが、暑い。もう30分もアスファルトの上を走っている。軽のオートバイに荷台をつけた車だ。

そのうちにガソリンが切れたのか、止まってしまった。ウイスキーのビンにガソリンを入れて販売している店があった。ここでもガソリン価格は上がっているとのことである。高床式の家が見えてきた。下は湿地だ。トンレサップ湖が増水すると水位が上昇するのだろう。

検問所がある。船に乗らないつもりだったが、船に乗らないと湖近くに行けないのだと、検問は言う。しぶしぶ20ドルを払って、湖の近くまで行く。船はこっちだよ。呼び声がかかる。太陽がかーんと後頭部を照らし、薄い部分が焼けるように痛くなる。

ぼんやりとした頭で考える。わたしは20ドルも支払った。このカネは公共施設の改善のために使われている形跡はない。どこに行ってしまうのだろう。カンボジャ人の1か月の平均収入は50ドルだと言う。支払った20ドルはいかにも大金である。
船の運転と、案内は少年であった。18歳、16歳だと言う。ペラペラよくしゃべるのだ。それもうまい英語で。
「学費は月25ドルかかるんです。午前中学校に行き、午後、この仕事をしています。将来は、シエム・リアップにでて、ガイドになりたい」
 耳元で叫ぶ。
「英語と日本語を勉強しています。今、あなたが20ドルくれれば水上学校の生徒たち、60人にノートなどをプレゼントできる。20ドルもらえない?」
 黙っていると、何度も言い続ける。
「ノー」
 俺だって毅然としているのだ。ノーと言える日本男児だ。
 すると、湖を岸からかなり離れたところで、エンジンを停めてしまったのである。
「20ドル、もらえると助かるんだ」
 だんだん怖くなってきた。
「もう、船を戻せ」
 にゃっと微笑むだけ。船は動かない。



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