ウォンエイヤイ駅へ |
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ウォンエイヤイ駅近く、道路は奥、そのわきのレストラン |
空には高速道路、スカイトレイン、空に向かって突き抜けるような高層ビル。足元には皮靴のお嬢さん。笑顔は? ない。排気ガスも少なくなってしまった。 「ここはどこ? 本当にバンコク?」 雑踏のなか、排気ガスに鼻をクンクンしながら食べるソバのだいご味。どこに行けば味わえるのだろう。一年で最も暑いバンコクで、しきりに考える。無理だよ。39度だもの。 この10年、日本はタイの生活習慣をずいぶん受け入れてきたものだ。タイ得意の裾だしは、もう日本で日常の光景となった。地べた座りだって、日本に持ち込んだし、携帯電話で声高に話すのも輸出してくれた。 日本の百貨店だって、タイから接客術を受け入れた。店員どうしのおしゃべり、店員ファースト、カストマー・セカンドだって。 日本だってタイに輸出した。しかめっ面だ。今じゃバンコクでは笑顔を捨て、憂鬱そうな表情がはやっている。 |
バスを降りて路地を行くと、突きあたりが駅 |
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ウォンエイヤイ駅、線路は奥 |
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駅構内で |
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ホームには店が並んでいる。 |
笑顔、混沌、ぐちゃぐちゃを求めて動いた。 高速道路がなく、スカイトレインも走っていない。モチ、高層ビルもなしだ。そこに行けば、天使の都、バンコクはあるって考えた。冴えている。 タクシン橋で電車を降り、タクシーだ。ここもすごい。我ながらあっぱれだ。2バーツのバスに乗らないなんて、どうしてそんな勿体ない事を! ウォンエイヤイ駅だ。ここはターミナル駅。本音は、ここが駅だとは分からなかった。ただ、市場があるようにしか見えなかったんだ。道路の脇の食事。笑顔が氾濫している。これを求めてやってきた。 ホームの後ろでは段ボールで囲い、闘鶏をしている男たちがいる。賭けているのだ。葉を一枚一枚重ねている若夫婦。アイスクリームを楽しんでいる少女。ここにタイがある。 |
マカロニ娘に、サワディ・クラップ |
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「美味しい?」 娘さんは体を硬くしてフォークを置いてしまう。 「何を食べているのかなあ」 「マカロニだよ」 そばにいた母親が代わって答える。 プラスチックの皿、髪をとめたバンドがお洒落だ。娘は固まったままだ。 「バイバイ」 「さよなら」 娘の小さな声が背中に触ったような気がした。 |
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パパイヤサラダおじさん |
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パパイヤサラダを作っているおじさんがいた。 リヤカーの上に調理台を乗せ、脇に使い込んだ木製の臼。 注文に応じて、辛子の量を尋ね、突く。なにやら液体を振りかけ、また、こねる。砂糖、塩を手際よく振りかける。また、こねる。おじさんの顔に汗が流れていく。 青いパパイヤの皮を器用に剥き、白い果実を細長く切っていく。臼に投げ込んで、こねる。何度も突く。その間に、群がってくるハエを追い払う。このバランスが絶妙だ。 手早くビニール袋に入れると、輪ゴムでくるくると回し、はいでき上がり。 「15バーツだよ」 |
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