リューデスハイム

この日のライン川下りのツアーには20人くらい集まった。日本人は、ワタシのほかに新婚さん、沖縄からフランクフルトに研修にきたという3人組の女性だ。他はサウジアラビアからやってきたご夫妻、オーストラリアの老夫婦などだ。

フランクフルトを午前11時に出発。1時間ほど走るとマインツ。そして、昼食のリューデスハイムだ。

「いいですか。レストランで食事をしたら、午後1時30分にライン川下りの船がでますから、めいめい乗船してください。クーポン券を見せるだけで乗船できます。場所は塔の前の船着場です。間違えないでくださいね。それでは船の上で……」

ガイドは日本語のガイドブックにも掲載されているレストランにツアー客を案内すると消えてしまった。

リューデスハイムは観光客で溢れている。華やかな小都市だ。

レストランで日本人の新婚さんは他人を寄せ付けない。写真だって2人だけ。他人にシャッターを押させない。三脚持参だ。沖縄の3人娘だって、ワタシを仲間に入れない。ワタシを見てはくすっと笑い、逃げる。
 ひとりだと食べ終わるのも早い。会話する相手がいないからね。早々とデザートを持ってこさせ、散歩としゃれ込む。太陽に手をかざし、直射日光を避ける。ピザ屋、ドイツ料理屋が並ぶ道をカップルが手をつないでゆっくりと歩いて行く。



乗船
――そろそろ時間かな。
 指定された船着場へ。新婚さんの男性だけが歩いている。白いスーツがドイツの緑に映える。
「ひとり?」
「トイレに寄っていたんだ」
「奥さんは?」
「先に行ってるって、いい場所をとるんだって」
 波止場には2隻停泊している。指示されたのは黄色の船体。かなり大きな船だ。別の船が汽笛を鳴らす。川面に波ができて、船体が方向を変える。
 船上から日本語らしい声がする。
「あれっ」
 男2人は同時に声をあげる。新婚さんの奥さんが叫んでいる。
「あれは、反対方向にいく船ですよ」
「あなたー」
「どうしよう」

ザンクト・ゴアールまでの乗船時間は2時間半だという。ラインシュタイン城も見られて、フランクフルトからの日帰りにはちょうどよいだろう。



ライン川下り

甲板に椅子を持ち出し、日光浴をしながら船を楽しむ人たちが多い。船室にはカップルがお茶を飲んでいた。どこから来たのか尋ねてみる。
「サウジ・アラビアよ」
女性が答える。



船ではドイツ語と英語で説明がある。
ネズミ塔、エーレンフォルス城を過ぎると、ラインシュタイン城である。乗客はカメラを一斉に向ける。
やがて小さな町をとおりすぎると、ローレライである。
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