カリファ・スタジアム、ドーハ |
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出発まで! |
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10月19日、午前2時30分、眉氏はカタールに国際電話を入れた。 時差を考慮すると、カタールはまだ午後8時30分のはずである。 「入国VISAを取ってくれないか」 相手はドーハでサッカーの代表監督をしていた。父親は旅行代理店を経営している。 「Mr.ゲジマユ、日本のサッカーチームは、今、イランに負けたね。いても立ってもいられなくなったの?」 「そういうわけ。いつものチームの動きとは違うからね」 「次は北朝鮮戦。21日の試合だ。たった2日間しかない。VISAはとれないよ。ホテルは満員だし……」 片目でスターTVを見る。アナウンサーのブライアンおじさんが何やら叫んでいる。おまけにスターTVはやたらにプレー中の選手をアップにするものだから、全体的なサッカーの印象は希薄になっている。 |
カタール 湾岸の小さな国。首都のドーハから砂漠を1時間も走ると、サウジアラビアやアラブ首長国連邦との国境に突き当たる。 ドーハ 外国人労働者が多かった。イギリス人、エジプト人は政府のコンサルタントとして、インド人、パキスタン人はタクシーの運転手としてだった。運転手のサラリーは400米ドル。 |
出発できた! |
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20日夜、眉氏は成田を出発できた。元代表監督のアリさんが、外務省を回ってVISAを取り、ホテルの予約までしてくれたのだ。 夜行便で飛び、アブダビを経由して、21日の午前8時にはドーハに入った。さっそく、アリさんの出迎えを受け、ラマダ・ルネッサンスへ連れていってもらった。ここは報道関係者専用の宿舎になっている。ツアーで来た観客はドーハ・シェラトンやシップ・ホテルに宿泊している。選手たちはガルフ・シェラトンで、階をたがえて宿泊している。 「日本は強いのに、ゴールの前でパスしちゃうんじゃだめだよ」 「キング・カズはアジアでNo.1の選手だよ」 そういえばここの新聞がキング・カズと呼びはじめたのだ。 北朝鮮との試合は夜だ。 今日、負ければワールドカップへの夢は断たれる。重苦しい息づかいでエレベーター乗ると、小谷実可子さんがそこにいるではないか。小柄で色白で、ぼんやりとした顔を見ていると、今日の試合は勝てそうな気持になってきた。なぜ、なんだろう。 |
ホテルで |
カリファ・スタジアムへ |
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日本の応援団 |
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午後4時。報道陣用のバスに乗ってカリファ・スタジアムに到着。試合の1時間前である。そのまま入場できるのだが、記念にとチケットを購入する。 ゴールの後ろに日本人サポーターが固まっている。少ない。150人くらいか。 「そんな応援で日本は勝てるのか!」 いつもTVに映っているスキンヘッドの男に怒られながら眉氏は踊りはじめる。まだ、1時間も前なのに。 「オーレ、オーレ」 「レッツ、ゴー、ニッポン」 両手を突き上げる。 「ナカヤマ、ナカヤマ、ゴン……」 腰をぐいぐいと前に突き出しながらスキップする。白人も面白がって真似をしている。 「カ、リオ、ッカ、ラモス」 「カモン、カモン」 手のひらでこっちに引き寄せる。そして、勝利のダンスも。これがきつい。スタジアムを行ったり、来たりして踊らなければいけないのだ。 「気合いを入れないと、勝てんぞ」 はい、スミマセン。スクワット式応援も加わり、試合前からへとへとだ。 北朝鮮の応援団は? スタンド正面だ。位置が素人っぽい。勝てそうだ。人数は? 30人か。沈黙しているな。 |
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カリファ・スタジアム 都心から車で10分。砂漠の中に、その威容が現れる。 |
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試合開始 |
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踊りながらの応援 |
「レッツ、ゴー、ニッポン」 爆発する。試合開始だ。選手だって頑張っているが、眉氏だって息絶え絶えになって声をあげ、踊る。この試合で、日本は息の根を止められるかもしれないのだ。 日本は調子よく攻めているが、ゴールに入らない。ゴールの前でやたら躊躇する。日本がピンチを迎えると、オフト監督は煙草を吸いだす。ナーバスな監督め! この神経質さが、彼の弱点だ。 でもね、北朝鮮戦。3対0のスカッとした勝利だ。我々だって勝利の処理のダンスを踊りまくった。 |
日本の得点だ! |
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勝ったぞ! |
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他国の応援者たち |
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ピッチを蹂躙するサウジアラビア人 |
他国の応援者たち サウジアラビアの大応援団が韓国との試合の後、ピッチになだれ込んだ。引き分けに我慢できなかったのか。 軍隊が出動して抑える。サウジアラビアの応援団は眉氏のカウントで1万5000人。試合中は、コーランのお祈りのような応援が延々と続く。この圧力は異様だ。 韓国は「コリア、コリア」と一本調子の性急な応援だ。イランとイラクは固まって騒ぐだけだ。統制はとれないが、サッカーは強い。 |
韓国の応援 |
イラクの応援 |
チケット |
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