チェンライ

ゴールデン・トライアングルへ


1993年5月



チェンライ
チェンマイに到着したのは午後1時を過ぎていた。バスターミナルでチェンライ行きの切符が買えたのは午後2時だ。

座席は右側が3席、左が2席。新幹線の座席なみの配置である。日本のバスのお下げ車両は、黒煙をあげてよたよたと山並みを走る。

両側の土地は白っぽく痩せている。休憩所に立ち寄ったとき、中年の日本人カップルをみた。めがねをかけた痩身の男性。化粧を落とした顔がやけに白い女性である。2人の短パンからでた足も白いのだ。

うつむいてしまう。自分のズボンに視線を戻し、手を腰に当てて足の長さを比較する。かなうはずはないのに。

終着のチェンライのバスターミナルで、早速、話しかける。
「こちらに住んでいるのですか?」
そうでもなければ、乗合バスで旅などしないのに。
「いやあ、ただ、ゴールデンウイークの休みに来てみただけですよ」
かっこいい。大企業の有能社員といった風情だ。


チェンライにある王室の別荘。国王の母が住んでいる。



ゴールデン・トライアングル
サムローの客引きが寄ってくるのを、あしらい、追っ払う。2人はまだホテルを決めていないらしい。
「タイ語、話せるのですか?」
「めちゃくちゃなタイ語ですよ。今日はどこにお泊りですか?」
「何とかリゾートというホテルがあるらしいのですが」
「?」
「コッテージがあって、象や野生の動物が来るらしいですけど」
女性はハイライトに火をつけると、スパスパ吸い出した。化粧を落とした顔は酒場の女性が太陽を浴びたようにむくんでいる。
「そのホテルはいくらです?」
「3000バーツもあれば宿泊できるんじゃないかしら」
わたしは急に話す気を失ってしまった。だって、100バーツくらいの旅社に泊まろうとしていたのだ。あまりの落差に愕然とする。扇風機があればいい。シャワーは共用。

勝手にしやがれ、この不倫カップル。


注:チェンライ行きのバス
バスにはVIP、エアコン付、普通の3種類あった。チェンマイからチェンライまでの180Kmを3時間半から4時間半で走る。



ゴールデン・トライアングルはタイ、ラオス、ミャンマーの国境が集まっている。かっては、麻薬の集積地だったらしい。



左はゴールデン・トライアングルで宿泊した外資系のホテル。
客はほとんどいなかった。



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