ブリュッセル

グランプラス、王宮

1981年2月27〜29日



パリ北駅にて―日本人に助けを求められる!

パリ北駅

ブリュッセルまでの切符

午後、パリ北駅。
ブリュッセル行き列車のプラットホームを確認していると中年の日本人女性に声をかけられた。
「すみません、ワタシ、夫とはぐれてしまったんです。パスポートも現金も夫が持っているものですから、どうしてよいか分からなくて……」
かなり真剣だ。
「どこに行くんですか?」
と、聞いてみる。
「デッツセルドルフなんです。夫とはぐれてしまって」
女性は震えている。「どうしよう、どうしよう」泣きさけんばかりだ。
「だって、ドイツ行きの列車は当分、ないじゃありませんか」
「夫を見つけないと、ドイツに戻れないんです」
「困ったな。わたし、これからブリュッセルに行くんです。わたしの列車はもうすぐでますよ」

しばらく考えて、駅長室に女性を案内した。女性は半狂乱になって泣いている。
「放送して見つけてもらいましょう。夫は英語かフランス語はできますか?」
「フランス語は駄目ですが、英語は」
駅の雑踏の中で英語のアナウンスが聞き取れるんだろうか?
「よし」
とうとうアナウンス室に行き、わたしは日本語で夫にすぐに駅長室に来るように放送した。

心配していたが、夫はやってきた。
「勝手に動いちゃだめじゃないか」
夫は怒っている。二人は、フランスの国鉄職員に礼を言うことなくどこかに行ってしまった。勿論、ワタシを一瞥しただけだ。フランス国鉄の職員に対して、礼を言う。無作法な日本人夫婦が情けなかくなってきた。

ベルギー行きの列車はすでに発車してしまった。






やっとブリュッセルに到着

ブリュッセル中央駅
午後4時45分発の列車でブリュッセルに向かった。コンパルトマンで、フィガロの「日本はモデルとなり得るか」という記事を読んでいると、記者を知っているよと声がかかった。きっかけができて、ベルギーに入るまで、雑談をしてすごした。
「パスポートの検査がないね」
ワタシが言う。
「そうさ、EC域内の旅行だからね」

タバコを吸いたくて、廊下にでる。すると、話しかけてきた学生が、女性に声をかけている。ブルージュに戻ると言っていた女性だ。




グランプラス
Bruxelles−Midi駅に到着したのは午後7時31分。グランプラスまで出て、ホテルを探す。グランプラスが見られる部屋で宿泊したかった。数軒当たっただけで、比較的料金の安い部屋がみつかった。ラッキーだ。

夜は、ギリシャ料理。
イカのフライとサラダ
串焼き
アイスクリーム
翌日の夜のことだ。
グランプラスの奥の路地にレストランが集まっている。一軒ごとにメニューを見ていく。どうしても、ひとり500ベルギーフランはするようだ。ちょっと高い。
「この路地のレストランはツーリスト用の店ですよ。だから高い」
老人に声をかけられた。
「そうだね、とても高い」
「安い店を知ってますよ。案内しましょうか」
「いくらくらいの店」
「400ベルギーフランだせば十分だよ」




小便小僧

老人はよぼよぼと歩いて行く。
「ここですよ」
「貝料理?」
外にあるメニューをみる。ムール貝は安いが、他の貝はそうでもない。老人はワタシをレストランに入れたそうだ。
「貝は食べたくない」
そういって、老人を振り切ってグランプラスに戻ったのだった。




ブリュッセル点景






ワタシの旅行は街をぶらぶら歩き、疲れたらカフェで一休みする。隣のテーブルに人がいれば話す。至ってシンプルな旅行だ。その点、ブリュッセルは感覚に合う街だ。



F・フォーサイスの小説に出てくるホテル
このホテルには是非とも宿泊しなければならなかった。料金は高いが、フォーサイスの小説に舞台として現れるのだからと無理して1泊した。




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