カルカッタ市内 |
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カルカッタに到着し、イミグレーションに入った途端、人の波に翻弄された。入国作業は遅々として進まない。コンピュータを導入したからだ。その最新鋭の機械も、疎かにしてはいけませんとばかり、木枠で囲ってある。 別に触りたくもないが、インド政府にとっては大切な機械なのだろう。 「滞在の目的は?」 優しい表情で、お嬢さんに問われる。 「観光です」 「どこへ行くの?」 |
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検査嬢は執拗だ。早く入国のスタンプを押せよ。だが、言えないでイライラしている。 「ガールフレンドはいるの?」 「はい、30人」 「インド人?」 「そうです」 ポーンと旅券が投げ返された。 |
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空港の建物から出れば、また人の渦だ。 20年ぶりのカルカッタ。以前と変わらない。ぼろを纏った人が、荷物をふんだくろうとする。乞食が足にすがりつく。10米ドルよこせと叫ぶ少年。 「ください」と言え。 そこをかい潜り、都心のホテルまでタクシーを奮発する。 間断なく鳴るクラクション。黒煙をあげる自動車。新型のアンバサダーというタクシーなのだが、冷房がついてない。 開け放った窓から、トイレの臭い、人いきれ、熱気、叫び声、クラクションが飛び込んでくる。 |
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インド人は誇り高い。 我々は世界一の科学技術を有している。思想だって世界一だと。だが、空港から乗った車はどうだ。まず、タクシーから世界一にしてほしい。そして、秩序も世界一になって欲しい。ぐちゃぐちゃなんだから。 文学だって世界一だと言う。確かにそうかも。でもキャッチ・コピーは最も美味いコーラ。最高に美味いチョコレート。最も古い博物館だ。単調でワンパターンなキャッチ・コピーだぞ。 |
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乞食だって、恵んでくださいなんて柔なことは言わない。10ドルよこせ。ギブミーではない。 この厚顔さと大胆さこそインドなのだな。 |
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谷恒生の「カルカッタ パラゴンホテル」の舞台 |
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「カルカッタ パラゴン ホテル」は谷恒生の名作である。カルカッタを訪れるならば、何がなんでもこのホテルに来なければ……。カルカッタでほかに何を見物すればいいのだろう。 ガードマンのおじさんに挨拶して中庭みたいなところに入っていく。薄汚れた文庫本とインドタバコをテーブルの上において、日本人が考えている。本とタバコがきちっと平行に置かれている。几帳面な日本人じゃないか。 部屋は開け放たれ、ベッドが6台ある。この日本人たちはインドに沈没してしまったのか。 ← 看板に「カンパ コーラ」とある。 コカ コーラではありません。 |
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