マカオ

中国に入国できなかった日


1994年1月



マカオを出国したが…

訪問するたびに周辺はきれいになってくる。

マカオの埠頭に到着すると、風が強く、半袖シャツでは寒かった。ヤオハンでジャケットを買おうか。せっかくのヤオハンに行かない手はない。

コーデュロイのジャケットを買い込んで観光名所を歩き始めた。物売りの攻撃に耐え、昼食を済ませると、中国に行きたくなった。

ビザはないのだが、なんとかなるだろう。むんむんとした中国人の本場の熱気と拝金主義の原産地を見たいと思ったからだ。


マカオの出国ポイントで列に並ぶ。
「中国へのビザはないのですが、なんとか入国できないでしょうか」
出国検査場で聞いてみた。
「カネを払えば何とかなるでしょ」
パスポートに出国スタンプを押してもらい、中国側へ歩く。細長い廊下をしばらく行くと売店がある。売り子は女性ばかりだ。中国語できゃあきゃあ、何か言っている。


中国側の入国検査だ。
長い列の最後尾につく。途中から中国人と外国人の列が分かれている。

中国人も外国人も紙を持っていて、振りかざしている。記入しなければならないのか。外国人は記入しなくともいいのか。

やっと入国検査だ。女性検査官は薄情な女性で、ここに記入しなさいと、紙を投げつけるのだ。記入して、また、後ろに並ぶ。

1時間がすぎた。やっと、入国検査だ。女性の検査官はパスポートをめくっている。
「ビザは?」
「ない」
「入国できない」
なんだか、表情がきつい。
「ビザはどこで取れますか?」
むっとして、答えない。
「あのお、ビザの窓口は?」
「帰りな」

帰りな、そんなこと言われたって、マカオを出国しているのだ。そして、中国にも入国していない。いったい、わたしはどこに帰ればいいのだ。

物売り攻撃は変わらない。そうっと、背後に忍び寄る物売り。




出入国ポイント
諦めきれない。
ノー−ビザで中国入国はダメなのか。イミグレーションをうろうろしてみる。中国人専用の出国手続きに行って並んでみた。
「あんたはあっち」
外国人の方に行けと、追いかえされる。
とうとう名税品店まで行って、入国方法を尋ねたが、名案はない。

マカオに戻るか。
戻ろうとしたが、出国と入国はオフィスが別になっていて、マカオの入国手続きはできないのだ。
どうする。冷や汗がでてきた。わたしはマカオを出国して中国に入れない宙ぶらりんの状態だ。

出国者が奔流のように中国にやってくるのを、逆らって出国手続きのオフィスに駆ける。向かってくる人を突き飛ばし、睨みつけるのだ。はやく、自分のポジションを確定したい。わたしは今、どこにもいないのだ。
「さっき、出国したのですが、取り消してくれない?」
「取り消し? そんなの未だかってないよ」
「これ、少ないけど」
カネを差し出す。
← マカオの中国への出入国ポイント。
   のんびりと余裕を持って見物していたが…。



マカオ市内



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