ウボン・ラチャタニ

アメリカ軍の残影を求めて

1993年9月


ドンムアン空港にて
早朝、5時30分。バンコク国際空港のカウンターで、ウボン・ラチャタニ行きの切符を買おうとした。
「満席よ」
タイ・インターナショナルのお嬢さんはつれない。
「どっかにあるでしょ」
「ありません」
「それじゃ、空席待ち、します」
チェックイン・カウンターの脇でじっと待つ。

「まだ、空席は分かりませんか?」
「6時30分には空席があるかどうか分かると言ったでしょ」
「でもね、気になって」
カウンターの前でジャンプしていると、職員がボスらしい人物と相談し始めた。
「分かりました、チェックインしてください」



ウボン・ラチャタニ
ウボン・ラチャタニの空港で、顔に赤味が差すのを感じた。暑いのではない。ベトナム戦争中、ここからアメリカ軍のF4やF5がベトナムに飛び立った。T28はラオスに爆弾の雨を降らせた。

ここから細長いラオスを飛び越せば、ベトナムはすぐ近くである。アメリカは世界中、好きなところに基地を作り、放り出して行ってしまう。

今、広大な空軍基地は一部分しか利用されていない。タイ軍と民間飛行場である。給油塔が赤さびを太陽に晒し、刻一刻と腐食を拡大していく。



アメリカ兵で賑わったナイトクラブ
市内で、アメリカ兵が楽しんだ場所を探す。ナイトクラブ、バーだ。ナイトクラブは赤い大きな日避け。ガラス。入口にNIKKOと記されている。アメリカ兵が夜な夜な札びらを切ったところだ。



アメリカ兵用のバンガロー
ナイトクラブの周辺にはアメリカ兵が住んだバンガローが残っている。階下は風通しがよさそうである。階上は居間になっている。現在はタイ人が住んでいる。そのタイ人が首を出して、不審な日本人を窺っている。

そっと覗いてみる。白い箪笥。タイ人には似合わない。家の周囲には肉厚の葉が茂っていた。



寂れたウボン・ラチャタニ



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