バンコク

北朝鮮大使館で粘る、将軍様の残影

1992年8月


北朝鮮大使館


北朝鮮大使館にて
紋章を参事官が説明している様子が映っている。
1990年のころはバンコクの下町、戦勝記念館近くの路地を入ったところにあった北朝鮮大使館は市内の東部に移転した。そのときから、数度、訪問して入国をお願いした。

「お宅はいい車をお持ちですな。ベンツとは」
「私どもはベンツしか乗りませんよ」
参事官は笑っている。でも、門を入ったところにある日本製の小型車を見たぞー。

大使館の20畳ほどの応接室である。
正面中央には慈愛溢れる金父子の写真。肖像画っぽく、いやに若作りで微笑んでいる。スイッチを入れたばかりなので、冷房が暑い空気をかき回している。

顔を上げると、偉大なる、百戦百勝の、鋼鉄の、この世に比類なき、人類が生んだ天才であり、民族の星であられる金日成主席を見上げるように掲出されている。

「あなたの国を訪問したいのです。偉大な国をこの目で見たい。偉大なる首領の生家、主体の塔、パリのそれよりも巨大な凱旋門」
「ぜひ訪問してください。ピョンヤンの春はきれいですぞ」

こんな話をこの一年繰り返している。タイを訪問するたびに、大使館に寄り、ビザの発給をお願いしているのだ。最近は、相手の外交官が露骨に嫌な表情をするようになった。あの人、また来たよ。そんな表情である。


そんな外交官の表情をみていて、可愛そうになってしまった。
ビザ発給を強要してはいけないのだ。



国立競技場での北朝鮮
かなり歴史的な建築物だ。
ここで、1966年アジア大会が開催された。当時の新聞をチェックしてみると、北朝鮮は参加していないことになっているが、そうではないのだ。

当時の政治的な問題で、北朝鮮は不参加となっている。だが、国立競技場の金メダリストの名前が飾られた壁をみると、北朝鮮が参加しているのだ。アジアの混沌を彷彿させる現場である。



日本人の名前が多く飾られている。
重量挙げの三宅選手などの懐かしい名前を見ることができる。バンコク観光の必須地である。

最近ではサッカーのワールドカップ、アジア地区予選で日本対北朝鮮戦の無観客試合が行われた地でもある。



ピョンヤンサーカス in Bangkok


入場券
ピョンヤン・アクロバティック・トループスと言うらしい。冷房のきいた屋内体育館で開催された。動物のショー、空中ブランコなどきっちりとした芸を演じていた。



■ アジア旅行記 目次
inserted by FC2 system